「鹿の王 (上)」(上橋菜穂子 角川書店)


    内容紹介

    2015年本屋大賞受賞!

    強大な帝国から故郷を守るため、死兵となった戦士団<独角>。その頭であったヴァンは、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。 その隙に逃げ出したヴァンは幼い少女を拾うが!?

    内容(「BOOK」データベースより)

    強大な帝国・東乎瑠にのまれていく故郷を守るため、絶望的な戦いを繰り広げた戦士団“独角”。その頭であったヴァンは奴隷に落とされ、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、一群れの不思議な犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。その隙に逃げ出したヴァンは幼子を拾い、ユナと名付け、育てるが―!?厳しい世界の中で未曾有の危機に立ち向かう、父と子の物語が、いまはじまる―。

    ★ ★ ★

     上橋菜穂子さんの「鹿の王 上」を読み終えました。豊島区立の図書館で借りたのですが、上下巻とも予約が多く、順番待ちが長いです。下巻が私の番になるのがいつになるのか分かりませんから、上巻を読み終えたところで、ブログに感想を書くことにしました。

     山崎行太郎さんの哲学研究会に出て刺激を受けると、「私も本を読まなきゃ、歴史を勉強しなくちゃ」と思います。このように思った私が上橋菜穂子さんの小説を読んだのですが、上橋さんはSF・ファンタジー作家であって、歴史小説家ではありません。だからと言って、荒唐無稽なことを書いているとは思えません。この地球という天体を舞台にすると、「地球のどこ? どの国のことを書いているの?」と、書き手も読み手もこだわってしまう。このようなこだわりから解放されて、思う存分「ありそうな事」を書けるのがSF・ファンタジーなんだと私は思うのです。
     ここで本書の中から、「ありそうな事」を引用紹介してみます。
     アカファの中でも最西端にあるトガ山地は、アカファ王国がツオル帝国にゆっくりと呑みこまれていく、その波が、最後に到達した地だった。
     強大なツオル帝国に抗っても勝てる見込みなどないことは、子どもたちですらわかっていたが、辺境の小さな氏族が抵抗もせずに服従すれば、奴隷に近い扱いを受けるだろうこともまた、誰もが知っている事実だった。
     しかし、逃げようにも、西には、ツオル帝国も遙かに残酷な支配で知られるムコニア王国が立ちはだかっている。
     アカファ王国は巧みにツオル帝国に恭順し、すでに帝国の中で一定の地位を与えられていたから、アカファ人は帝国属州の平民としての暮らしを保障されていた。
     だが、トガ山地に点在している各氏族は、アカファ語をしゃべり、ムコニアなどの外敵の侵略に対しては、〈アカファの民〉として戦っていても、アカファ人ではない。みな、アカファ王国に恭順の意を示す代わりに、緩い自治権を許されていた独立民であったから、アカファ王国併合の後も、ツオル帝国属州の平民とはみなされていなかった。
     ツオル帝国が長い年月をかけてじっくりと進めてきたアカファ本土の属州運営が安定し、最後の仕上げとしてトガ山地の平定計画に本格的に着手したとき、アカファ王は各氏族に使者を遣わして、この段階でツオル皇帝に恭順の意を示せば、ツオル軍の進軍を思いとどまらせて、氏族民の身の安全を保障するよう交渉できると言ってくれた。
     しかし、アカファ王にできるのは「身の安全の保障」までで、属州の旧統治者という立場では、服従後の身分決定に関われるはずもなかった。
     征服した土地の民族の扱いは、帝国の辺境支配に深く関わることであり、そこに、属州の旧統治者が関与することには様々な問題があったからだ。
     ツオル帝国は、下層民を意識的に故地から引き離して、遠方の征服地へ入植させる政策をとっている。アカファ人のような平民としてではなく、下層民としてツオル帝国に組み込まれてしまえば、故郷から引き離され、慣れぬ異郷での過酷な暮らしを余儀なくされる。
     八方塞がりの中で、ガンサ氏族の長たちが長い長い話し合いの末に選んだ道は、〈抵抗者〉を作ることだった。・・・(50頁)

     アカファ岩塩鉱は、もともとは、この地に暮らすアカファ人が発見し、数百年に亘って、塩を生産し、アカファ王国の財政を支えてきた場所だ。
    アカファ人たちが昔ながらの形で運営していた岩塩鉱を、父の代で、強引にツオルのやり方ーー戦争奴隷を使い捨てる方法ーーに変えたことが、この地の民に微妙な感情を生んでいることを知りながら、・・・(109頁)

     以上です。
  • 2015.11.30 Monday
  • 19:43
  • 日記・つぶやき
  • comments(0)
  • trackbacks(0)

    

スポンサーサイト

  • 2017.06.27 Tuesday
  • 19:43
  • -
  • -
  • -

    
コメント
コメントする
(承認制です)








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック
(承認制です)